ビートルズの存在がコピーバンドを生み出すのはもはや必然であり、実際世界中に多数のコピーバンドが存在しています。YouTubeでは各国のコピーバンドの様子が見られます。ビートルズはイギリス出身ですが、英語を母国語としていない南米や日本の方がビートルズコピーバンドが盛んなようです。東京・名古屋・大阪・福岡などの大都市では多くのビートルズコピーバンドが活動しており、「全日本コピーバンドランキング」が作れるぐらいの数はあります。また、コピーバンド活動をしていないまでもYouTubeや各種SNSで「弾いてみた」映像を公開している人も多いです。
南米で流行っている理由は不明ですが、日本の場合は先人の偉業を躊躇なく真似する、予定調和の演出(いわゆる「おやくそく」)に対して好意的、といった文化的素養が影響しているのかもしれません。
「コピーバンド」「トリビュートバンド」「カバーバンド」
日本がコピーバンド大国であることの一つの根拠として、「コピーバンド」が和製英語であることが挙げられます。コピーバンドは日本語として浸透するほど日本人にとって直感的な概念ということです。では「特定のバンドの楽曲のみを演奏するバンド」を海外ではなんと表現するかというと「トリビュートバンド」「カバーバンド」などと呼ぶようです。
これらの用語の違いは何でしょうか?日本では「コピーバンド」を含めたこの3種の呼称を以下のように使い分けているようです。このように使い分けるようになった経緯とともにまとめます。
コピーバンド:究極的には対象バンドの楽曲の完全再現(「完コピ」)を目的とするバンド。日本で生まれた「コピーバンド」という概念そのもの
トリビュートバンド:コピーバンドのうちカツラやメイクまで駆使して対象バンドになりきろうとするバンド。「トリビュートアルバム」「トリビュートライブ」などの場合の「トリビュート」(敬愛)というニュアンスとは異なるが、「トリビュートバンド」として来日公演を行う海外のバンドはより多くのファンに敬愛の念を示すためにモノマネ(そっくりさん)要素が強くなる傾向があるため日本ではこのイメージが定着した(例:The Fab Four ファブフォー)
カバーバンド:対象バンドの楽曲を演奏するが完全再現を目的としないバンド。「カバーアルバム」などプロのアーティストが独自解釈で他のアーティストの楽曲を演奏する際に「カバー」と表現されることが多いことによる
冒頭に述べた「実在のバンドのライブの感動を追体験するプロジェクト」という概念に一番近いのは本来、ファンも巻き込んでご本尊アーティストに敬意を払うニュアンスが含まれる「トリビュートバンド」なのですが、日本ではモノマネ要素が注目されてしまうのが悩みどころです。日本一有名なプロのビートルズコピーバンド「パロッツ」は自らを「ビートルズのトリビュート(コピー)バンドとして世界的に有名 」と表現しています。世界を見据えて「トリビュートバンド」としたいが、日本基準のモノマネに限らない「コピーバンド」であるともしておく、ということでしょうか。